Img_yuigon


民法によると、 遺言書の書式などは定められていますが、 言語に取り決めはありません。
書式さえ正しければ、 英語や中国語など他国の言語でも有効性が認められるそうです。
しかし、 自筆の遺言書には捺印が必要です。
英語圏などでは印鑑の文化がなく、 サインが一般的であるため、 捺印が足りずに無効となるケースがあるそうです。
私の友人で、 イギリスの男性と結婚した人がいました。
結婚して数年で、 なんとご主人を亡くしてしまったのです。
待望の赤ちゃんも生まれ、 ご主人は赤ちゃんとたった半年も一緒に過ごせませんでした。
彼女の実家で両親と同居して暮らしていたため、 イギリスから義両親が来日され、 両家両親と遺品の整理などをしていた時のことだそうです。
ご主人はご病気だったため、 なんと彼女と両親宛に手紙を、 まだ赤ちゃんだった子どものために遺言書を遺されておられたそうです。
それはもちろん英語で書かれていました。
しかし、 それは捺印が無かったのです。
病床にあり、 妻にも相談せず準備したため、 もちろん弁護士に同席を依頼して作ったようなものではなかったようです。
法的には無効だと判断されたようですが、 最大限彼の希望を尊重する形で相続を完了することが出来たそうです。
日本で暮らす外国人の多くは、 銀行口座を開設する時に印鑑を作ります。
金融機関で勤めていた頃、 ごく稀にカタカナで書かれた外国名の印鑑を目にすることがありました。
ですから、 彼も持っていたはずなのですが、 日本でもサインを捺印の代用と出来る書類も増えてきていることから、 捺印することは思い浮かばなかったのかもしれません。
彼女は子どもが大きくなったらその遺言書を読ませるのだと、 まだ小さいうちから英語を学ばせることにしたようです。
もちろん、 その子にとっての祖父母とのコミュニケーションは英語でしか成立しないわけですから、 元々学ばせる気ではいたと思いますが。


そして、 この話には続きがあります。
彼女はその数年後に再婚を検討するようになるのです。
再婚相手は日本の方でした。
しかし再婚してしまうと、 前夫の希望通りには管理していた財産を子どもに遺すことが出来なくなるかもしれないと考えた彼女は、 日本人ですが英語で遺言書を作ることにしたようです。
再婚相手は英語を話せません。
再婚を考えるくらいですから、 信頼していないとか言うわけではないと思いますが、 将来的に再婚相手との間に子ができたらなど色々な理由を考えたのだと思います。
今度は前夫の失敗を教訓とし、 弁護士立会いのもと作成したそうです。
そして再婚相手にそのことを打ち明けたそうです。
きっと私は長生きするから、 あなたのことが信用できないとかじゃなくて、 何も覚えていないあの子が幸せに暮らせるようにそうしたことだと伝えたそうです。
その後何かがあったのか、 その遺言書が原因のひとつになったのか、 再婚の話は立ち消えになってしまっていました。
残念なことではありましたが、 きっと彼女にはまた良いご縁が巡ってくると思います。
私も子を持つ身になって、 彼女の気持ちは痛いほどよくわかります。
幸いにも夫は元気に過ごしてくれていますが、 やはり何かあったらと想像するだけで不安です。
そのために一般的には保険に入ったりと備えるものだとは思いますが、 それだけでは伝えられない希望がある方には、 遺言書は必要なものかもしれません。
最近ではエンディングノートなるものも流行っていますが、 そういう思い出だけじゃなく法的な取り決めが必要な方は、 ぜひとも弁護士に相談することをお勧めします。